「こジャレた老後に… プロジェクト」 & 「イベント情報」

開催日:2013年12月8日(日)14:00~16:00 参加費用 \2,000 開催場所:名古屋能楽堂 名古屋市中区丸の内1-1-1

第24回 “レポート” 能への誘い『幽玄の世界にようこそ』

「幽玄の世界にようこそ」

どんな世界かしら。そう思って能楽堂に・・・
「奥深い味わい」「余剰」「奥深く計り知ることができない」「優雅」「上品で優しい」・・・・知っている言葉を並べても置き換えることができない世界に、講師の坂井音隆先生並びに音晴、高梨万里先生は私たちを誘ってくださいました。

何しろ声がいい。 凜とした佇まいからいい緊張が伝わってくる。 そぎ落とされた具体は想像力を生む。 明確な主張に心からの共感を覚える。 これらは、究極の美と言えるのではないでしょうか。

日本人の日本知らずと言われますが、知ることに適齢期はありません。この幽玄の世界に足を踏み入れた時がチャンス。現代のドラマや映画と同じように、人間の姿を描いているこの能というスタイルに、肩を張らずに親しもうとと思いました。

これも本物に出会えたからこそだと思います。 
『墨田川』の子を思う母の一念は、古今東西共通の普遍の価値ですね。

『羽衣』の「あーずまあそびのかーずーかーずーにーーー」、今も口ずさんでいます。   ・・・ 参加者より

 「隅田川」のあらすじ・・・

春の夕暮れ時、武蔵の国隅田川の渡し場で、舟頭が最終の舟を出そうとしていると旅人が現れ、女物狂がやってくると告げました。女は都北白河に住んでいましたが、わが子が人買いにさらわれたために心が狂乱し、息子をさがしにはるばるこの地まで来たのでした。

舟頭が、狂女に、舟に乗りたければ面白く狂って見せろ、と言うので、女は『伊勢物語』九段の「都鳥(みやこどり)」の古歌を引き、自分と在原業平(ありわらのなりひら)とを巧みに引き比べて、船頭ほか周囲を感心させ、舟に乗り込むことができました。

川を渡しながら、舟頭は一年前の今日、三月十五日に対岸下総(しもうさ)の川岸で亡くなった子ども、梅若丸の話を物語り、皆も一周忌の供養に加わってくれと頼みます。舟が対岸に着き、みな下船しても、狂女は降りようとせず泣いています。船頭が訳を尋ねると、先ほどの話の子は、わが子だというのです。舟頭は狂女に同情し、手助けして梅若丸の塚に案内し、大念仏で一緒に弔うよう勧めます。

夜の大念仏で、狂女が母として、鉦鼓(しょうこ)を鳴らし、念仏を唱え弔っていると、塚の内から梅若丸の亡霊が現れます。

 

抱きしめようと近寄ると、幻は腕をすり抜け、母の悲しみは一層増すばかり。やがて東の空が白み始め、夜明けと共に亡霊の姿も消え、母はただ草ぼうぼうの塚で涙にむせぶのでした。

音隆師の謡と舞・音晴師と万里師のワキと地謡に、子を思う母の一念がひしひしと伝わってきました。
無駄なものをそぎ落とし、凜とした佇まいの中に主張を込め、全身で表現する能の神髄を目の当たりにしました。